アーカイブ2012.1.29(NO.156)

アーカイブ2012.1.29(NO.156)
米中間の冷戦は
起こりうるか
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By SeimeiWada2024.11.19



    中国温家宝首相は、今月の半ば中東を歴訪した。イラン制裁を強く求めるアメリカの政策が強まる中、イランの原油以上に輸入量の多いサウジアラビアなどの中東を訪問した。


 
  温家宝氏は、イランとの原油貿易を守るという言及とともに、イランの核兵器に対しては警告を発している。イランによるホルムズ海峡の、封鎖への懸念に関しては、全世界の利益のために、船舶の通常運航は、確保されなければならないことを、強い言葉で発言している。


 
  歴史的には19世紀のイギリスが、20世紀のアメリカが、ヘゲモニーを握って、自信に満ち振舞ったように、21世紀は、中国が確信に満ちて振舞おうとしている。アメリカはこんな中国のヘゲモニー、覇権を決して認めようとはしてはいない。中国とは、政治体制についての考え方も違うし、民主主義の理念も共有してはいないと考えている。こんな国にヘゲモニーを渡してなるかというのがアメリカの正直な気持ちである。今後の主戦場は、アジア太平洋地域に焦点が据えられた。


 
  アジアの国々は中国に経済的に取り込まれている。中国元はモンゴル、台湾、ベトナムパキスタンでは、支払い形態として受け入れられている。香港の昨年初期半年間の貿易取引での中国元は昨年同期の13倍に増加している。先頃、わが国の首相が訪中した際、貿易決済をお互いの通貨でしましょうということに同意したことも、一連の中国元の国際通貨への歩みと捉えることが出来る。


 
  ヘゲモニーを喪失しつつある大国が、指をくわえて、のさばりだしたチャレンジャーに引っ掻き回されるままにしているか。耐えられるか。


 
  旧ソ連と長く続けられた冷戦と似通ったものへと、米中関係は一歩踏み出すのか。


 
  アメリカは、まだまだ強い国である。一握りの富豪が99%の市民をプアにしている国ではあるが、イノベーションにかける本能はどの国よりも力強さを感じることが出来る。立ち直りは意外と早いのかもしれない。中国は、中国元を低く抑え、輸出に有利な通貨操作をしている国である。アメリカの不安定を誘う鍵をにぎってもいる。アメリカに対する世界一の債権国家でもある。


 
  中国元が世界通貨として流通しだしたら、アメリカは、借金まみれのただの普通の国に成り下がってしまう。これまでのように、ドルの輪転機を回し続けることは出来なくなる。


 
  イギリスポンドは両世界大戦でアメリカのドルにその地位を譲った。今、中国の元は、10年あるいは、次の10年でドルに、その地位を取って代わるだろうと専門家は見ている。


 
  世界の軍事力の半分を有しているアメリカがそうやすやすとヘゲモニーを中国に譲り渡すとは考えられない。世界が中国の脅威を認める限り、アメリカの軍事力に頼る。アメリカは、その見返りにますます経済的要求を強くしてくるものと考えられる。冷戦は起きない代わりに、同盟国である韓国、日本は、自動販売機から無尽蔵に資金を出し続けることを覚悟しなければいけない。これが覇権国家交替期における宿命のようなものである。


 
  国論を二分しているTPP問題の本質は以上のところにあると察するべきである。


 
  わが国の今後はとてもばら色とは言えない。就職氷河期が訪れ、年金プアが巷に溢れることのない国家戦略を構築しなければならない。増税だけが万能薬ではないことを肝に銘じるべきだ。

 

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